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第1曲 木香薔薇(モッコウバラ)に寄せて



漢詩
漢詩発音記号

緑樹(リョクジュ) 陰(かげ)濃(こま)やかにして夏日(カジツ)長し
楼台 影を倒(さか)しまにして 池塘(チトウ)に入る
水精(スイショウ)の簾(レン)動きて 微風(ビフウ)起こり
満架(マンカ)の薔薇(ショウビ) 一院(イチイン) 香(かんば)し



満開のモッコウバラ 木香薔薇(モッコウバラ)

日本に享保の頃渡来した、中国原産のツル薔薇。

この薔薇のために選んだのは、晩唐の詩人 高駢(コウベン)の七言絶句です。

写真のクリーム色のモッコウバラ薔薇には残念ながら、詩に歌われたような、香りはありません。白花には香りがあるそうで、居間から張り出したパーゴラには、この春、白のモッコウバラを、植えました。3年後、5年後を楽しみにしています。

左写真は我が庭で、2000年5月下旬に咲いたものです。植えて3度目の初夏です。このあと、夏中、見事に枝が伸びました。一枝5メートルほどあるものが、何本も毎朝目覚めるたびに増えていきました・・・。(少々オーバーに表現させていただくなら。)
「上のほうで、元気に枝を伸ばすので、テラスに最適」そんな記述をバラ図鑑で読んだのは、植えて随分経ってからでした。
いくら棘がなくて、扱いやすいとは言え、私の背丈より高いオベリスクをあっという間に覆い尽くし、縦横無尽に枝を振り回すのには、ほとほと閉口しました。なぜなら、お隣との境に植えたので、いつもお隣の駐車場に車がないのを見計らっては、ビヨ〜ンと伸びた枝を無理やり引っ張って、やはり境界沿いに植えてあるコニファーに、括り付けなければならないのです。
伸びっぱなしにしたら、隣人は車に乗り込む度、鼻先に枝先がブラブラ、なんとも馬鹿にされているような、不快な気持ちになる事でしょう。

いよいよ寒さの本格的になったある日、思い切ってこの薔薇は移植しました。移転先は玄関横の角、壁つたいに伸びても良いし、ここなら隣の敷地にまで伸びることもないと思うのです。移植の為ほとんどの枝を払われた無残な姿のモッコウバラ、もう一度振り出しから、やり直しです。


英語やドイツ語の詩と違って、漢詩というのは、中国語を知らなくても、おおよその意味がわかるので、ありがたいです。だから、中学生が国語の授業時間の中で勉強するのも可能なのでしょう。しかし、楽譜だけで音を聞かせずに音楽を学ぶ事がありえないように、厳しい韻律の規則が生み出した、あの美しい抑揚を持つ原語を聞かず過ぎるのは、なんとも残念です。

 

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