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美しい休日 4 ちょっとおりこうさんになったような一日

Sunday, November 05, 2000


「だから言ったじゃない。」相棒がしたり顔で見下ろしている。

頭が痛いんじゃない。ソファーに仰向けになって、天井の模様を目でなぞっているだけ。昨夜の赤ワインの残党が、体中の組織隅々に潜伏しているのを、感じているだけ。足先と指先だけ、ピクピク動かしてみる。しんどいなぁ、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。相棒は、「もう、やめときなさいと言うのに聞かないんだから。」

「行くよ!」優しく抱き起こしてくれればいいのに、腕を引っ張らないでよ。これでは、拉致じゃないか。だけど文句を言っている暇はない、集合は10時。「急いで急いで。」

「面白そうだから行こう。」誘ったのは、私だし、二日酔いで遊びの予定をキャンセルするなど、ポリシーに反する。なんとしても行くつもりではあるが、さて、どのような会であるか。自然観察会というのだから、怪しい事はないだろう。戸隠村観光課と参加費無料の二文字から導き出した結論。

半月前に来た時は紅葉はまだ早かった。今日は山全体が山吹色。こちらの体まで黄色く染まりそう。道の両側、空を覆うような木々の間から真っ青な空が見えて、時々金色の雨と見えたのは、風に舞う唐松の細い葉。

宝光社、中社、越水、戸隠植物園、奥社、キャンプ場、奥まるほど冬に近づく。山の艶が消えて寒々とした風景に変わっていくのが手にとるようだ。唐松の林が透けてきたな、そう思うころ到着。

我々より年配の方たちが大勢いらっしゃる事に、まず安心。これなら、そうそう過酷な山歩きなどはさせないだろう。


戸隠 戸隠キャンプ場から登山道に入ってしばらく歩きます。昔はブナ林だったのが、間伐されて牧場になった場所。ですが、今は馬も牛もいません。
ヤドリギの実
200万年前に、海底火山が隆起してできたという戸隠連峰をバックに、赤い実を付けたアズキナシが、伸びやかに枝を張っています。その隣の高い梢にヤドリギが見えます。(左写真)

ヤドリギは寄生植物。この実は鳥のお腹を通らないと発芽しないのだそうです。肉眼では黄色い葉と見えたのですが20倍のフィールドスコープで見ると実がはっきり確認できました。ねばねばした実なので高い木の枝にちゃんとくっ付くのです。(右写真は望遠で撮ったヤドリギ)

「馬はいませんが、熊はいます。」「えー?熊がいるんですかぁ?」オーバー過ぎた反応に、「ここは熊のお屋敷ですよ、我々はお客様。」確かに。「でもここの熊はおりこうで、人間には会わないようにしていますね、いや、戸隠の人々のお行儀がいいせいかな?どこかの観光地のように、人間がごみを残していくと、熊が来るようになりますね。」なるほど、御もっともでございます。

ブナ かつての牧場にわずかに残るブナです。ブナの皮は厚く硬いです。しかし大変腐りやすい木で、この写真では見えませんが、表皮が傷つき、そのため中は腐っているのだそうです。樹齢約200年と思われるこの木、多分子孫は残せないでしょう。

条件が同じなら、ブナは葉っぱの体積が、どの木よりも多いのだそうです。そして、その葉は分解が遅く、1年以上かかるため、どんどん落ち葉が重なって、腐葉土が厚くなります。

ブナの森は、スポンジのような、と言われます。素晴らしい保水力を持つ森です。用材に適さないブナは切られてパルプとなって私達の役に立ったのです、間伐のあとには杉や唐松が植えられました。

一度切ると、ひこばえの出ない木ですから、絶えてしまいます。実生も硬い土では育ちません。こうして、かつては日本全国にあったブナの森はどんどん減りました。

庭つくりは5年先を考えてと言うけれど、森は100年200年・・・・・。気の遠くなるような時間に育まれているのですね。

ブナの実 ブナの実です。柔らかいトゲ状の殻斗(かくと)に包まれています。中の実は2つで、形は蕎麦の実のような三角錐です。

実には脂肪や蛋白質が多く、動物たちの大切な食料です。特に野ねずみの好物なのだそうです。

実のなるサイクルは条件にもよりますが、だいたい5〜6年に一度。

ブナの木の下で落ち葉を掻き分けて、実を探します。宝物探しのようで楽しい!ブナの木の下は本当にふかふか。
鳥の声がする、いいお天気で背中がポカポカ、風がおいしい。いつのまにか赤ワインの残党も消え、体が浄化されるようでした。

ヒガラ 森では鳥たちもちゃんと棲み分けます。これは望遠で撮ったヒガラ。高いところに住んでいます。我が家に時々来るシジュウカラはもう少し低いところに。もっと低い笹のようなところに住んでいる鳥は、たとえばコルリなのだそうです。

他にも秋の実、オブジェがたくさん。

ヤマブドウ ナギナタコウジュ ?
山葡萄 ナギナタコウジュ とてもいい香りがします 白い綿毛が枯れ木に花の咲いたよう

丁寧に説明してくださったボランティアのみなさん、ありがとうございました。何も知らずにする山歩きも楽しいけれど、色々の事がお勉強できて、帰る頃には頭すっきり、大変充実した、酔い覚ましのひとときでした。


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