手紙に登場する植物一覧表 手紙保管庫 素敵な庭造りトップへ 

前の手紙へ 次の手紙へ

 聞いて下さいますか?

 コンテナの異変に気がついて、「見て見て!こんなふうになっちゃってる!」いきなり叫んだので、ウトウトし始めた相棒は「一番眠い時に起こさないで!」と珍しく声を荒らげます。眠い時に起こされるのを、もっとも嫌う人だったこと、思う余裕もなかったのです。

 昨日積もった雪の照り返しが眩しく明るい外に、気分が晴れるはずだったのに。低く流したモーツァルトのピアノコンチェルト20番、短調のメロディーが、まさか悲しい心に添って響くとは。

 2センチ、やっと伸びてうっすら緑色がかってきたばかりの芽は、千切られてコンテナに寝ています。丸いコンテナの4分の一ほど、上に張った苔もろとも掘られています。目当ては球根だったのでしょうか。ガーデンテーブルに載せて、毎日、芽の伸び具合、色の変化など、楽しみに眺めていました。こんなふうにされたのは、一日曇り空、雪の舞う寒い天気に障子も閉めていた、昨日?
蕾のヒヤシンス
 ピアノの練習の手を止めて、何とはなしに外を見たら、ああまた雪か、と思いました。しばらく降らなかった雪の表面は埃で汚れていたし、みずみずしさのなくなった肌のようで、むしろほんの少し新雪が乗れば、気休めの化粧になるだろうと、ボンヤリ思ったものです。雪などもう怖くない、日ぐすりが効いてくるから何の心配もないワと、庭を対角線上に眺める位置に腰掛けて、テラスのガーデンテーブルは見えませんでした。
ほじられたコンテナ
 部屋に置いたヒヤシンスが開きかけていました。まだ強い香りも放たず、横のランプシェードに似た色がやっと見え始めたところでした。花が終わったら、あのコンテナのクロッカスといっしょに庭へ下ろさなくちゃ、チラッと思ったような気もしますが。こんな恐ろしい事が球根の身に起きているなんて、思いもつかずにいました。

 出かけなくてはいけないので、四六時中、番をしているわけには行きません。テラスに転がっていた、網状の苗箱をかぶせて、やはりこれも気休めでしょうか。 
                               2月17日 淳子

メール