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 こんにちは

 朝に暖かく着たフラノのコートが、昼には埃っぽく、もっさりと感じました。このまま洗濯やさんへ駆け込みたくなって、この感覚こそ確かな春の発見。

 午前中、ビルの一室に閉じこもっていたから、強い陽射しにいっそう目がくらみます。眩んだ先に、土手の斜面に、薄青いイヌフグリが咲いています。まだ短い雑草の緑と溶け合って、リンゴの木の根元にびっしりカビが生えた様。我ながら、さえない連想だと思いましたが。

 家に戻ると、庭の雪も朝より、ぐんと減っています。雪は後退して、止まった波打ち際が庭に出現しました。潮がひくように、スーッと波の雪が消えて欲しいものです。プシュキニアの蕾

 数日前の暖かい日に、水仙の芽を見つけて喜んだ事は、前の手紙に書きましたっけ。今日はあの時より、たくさん芽が出ています。そしてたった一つ、プシュキニアの蕾を見つけました。石と石との小さな隙間から顔を出していて、うっかり踏むところでした。

 まだ花なんて、黄花セツブンソウ以外は期待していませんでした。球根を植えたのは、私に違いないけれど、忘れていたので秘密になっていました。突然秘密を明かされて、私は自分のこしらえた秘密に驚いたわけです。

 驚いた事がもう一つあります。冬の始め、庭掃除の時、枯れた宿根草の茎や、剪定した葉を、まとめて置いたまま、雪が来ました。少し融けたら片付けるつもりが、この冬の絶え間ない大雪でした。今、雪が融けて、腐葉土に成りかけ、焚き火の跡のようです。その中に、不釣合いに生き生きとした緑があります。近寄って手にとって見ると、50センチほどの刈り取った茎、ミイラのような黒い茎から出ている葉でした。その葉の形、長い茎から考えて、きっとジギタリスでしょう。

 何ヶ月も雪の下にいたのに、よくもまあ。その生命力に感心して、間違いなく春は復活、蘇生の季節だと思いました。    3月14日 淳子