| こんにちは。 黒法師がすっかり緑になってしまいました。  霜が降りる前に屋内に取り込んで、しばらく玄関において置きました。霜も当たらぬ代わりに、日も当たらず、日焼けが醒めるのと、新芽が色付かないのとで、気がついた時は、軟弱な風貌です。 しかし、その緑は艶々と明るく、なかなかハンサムな青二才です。かつて強い陽射しの下、色とりどりのコンテナ植えの中で、その名のとおり真っ黒に日焼けした葉で、一人異彩を放っていた彼。通りがかりの人に必ず一声かけさせた、あのプレイボーイぶりは、今も衰えていません。 普通、観葉植物は、冬に強ければ真夏の直射日光に弱く、逆に、夏に強ければ、冬は生気の失せた葉色になるものが多いのですが、この黒法師はまるで二重人格のような奴です。或いは、どんなわがままな要求にも応じてくれ、満足させてくれる、またとない恋人のようなものです。葉は葉のようであり、花のようであり、ダンディーにも見え、エレガントにも見え。 今は食堂の隅に、たった一鉢で置かれている黒法師です。せめて雪の照り返しが眩しい日には、ガラス越しの日光浴をさせようと、窓辺に置いたら、「そんなところには邪魔！」の一言で敗退です。あーあ、夫（ツマ)と言う字にゃ勝てはせぬ・・・、ん？ツマ違いだったかな。 台所仕事をしながら、時々黒法師を眺めています。寒さにも暗さにもめげず、じっと春を待つ姿に、情が移らないはずはありません。今度の夏には、あなたを中心に葉物を集めて、花は四季咲きのバラだけをはべらせましょう。優しい雰囲気はフンショウロウや初夏に輿入れ予定のマダムブラビとクロチルド・スペール、それからちょっと印象的な、赤黒のルイ14世など。 極上の黒法師ハーレムコーナーを作ってあげるね、と冬の恋人に約束です。 1月16日 淳子 |