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バラの蕾 こんにちは

 まだ赤味の残る薄い葉の上、ころがる丸い雫に今朝の青空が写るようです。大きな台風が引きずった裳裾の一部は、険しく高い山に一段と薄く粗くなって、二日間空の上を覆いました。静かな真っ直ぐの雨は、台風と言うには申し訳ないような穏やかさでした。

 こんな時は、屏風のような山をありがたく思います。でも、真冬には、冷たいシベリアからの湿った空気は、山にぶつかり、白い悪魔を降らせます。

 朝、こんなに晴れたのは、久しぶりです。静かな庭ですが、生き物の息吹は、感じます。台風が来るぞと人間が騒いでいた数日前も静かでしたが、高い梢の葉が時々揺れるだけで、庭はシンと静まりかえって、まるで死んだようでした。虫は一体どこへ行ってしまったのだろうと思いました。

 今朝は、みんな戻ってきました。小さな虫は素性を明らかにしないまま、光の中で軌跡を示し、もっと慎み深いものたちは、葉の茂る暗いオーケストラボックスの中で、秋の音色を奏でます。踊りの主役はアゲハとトンボです。アゲハは古典的な優雅な舞ですが、トンボはやたら止まりたがって、前衛舞踏みたいです。

 1センチに成長したキアゲハの幼虫5匹をみつけました。ほとんどのものには、まだ背中に白い色が残って、上手に鳥の糞に擬態しています。なかに、よく太って、綺麗なキアゲハらしい背中になっているものがいました。よしよしと、さすってあげたら、オレンジ色の角を出しました。まだ短い鬼の角みたいでした。

 このうち何匹が舞姫になれるのでしょう。前途多難な命たちに、幸運の青空が広がる事を祈ります。
           8月23日 淳子