おはようございます。 部屋からそのまま出るのは、いかにも無謀な気温になりました。薄手のナイロンの、動くとシャカシャカ耳障りな音がする、新しい上着を羽織って庭に出ました。いつもは黙っている隣の犬が、吠えるので、誰かいるのかと思ったら、どうやら私に吠えているようです。なんと情けない、たまに新しい物を着たら吠えるなんて、いやねぇ。 でも彼(ワンちゃん)も、毎朝こちらを見ていたのですね。道路から見えない秘密の庭と思っていても、意外に両隣さんからは、よく見えているのをうっかりしました。以前も、おはようございますの挨拶のあと、アドレス何でしたっけ?といきなり聞かれて、おおおっ!と思ったことがあります。お隣の敷地にまた何か伸びていってやしないか、と思わず見てしまいました。 朝の庭は、昼の実用の庭とは違って、同じ物を見ても、そこにファンタジーを見るのが、私流です。草取りや、モクサクを撒きながらも、お伽話を聞いています。 地植えにしたツルなしエンドウは、はやばや枯れましたが、近くにさしておいた支柱はその後アサリナが絡んで、そこから離せなくなりました。こうなると支柱は、魔法使いの忘れた杖になります。 ニコチアナは植えたのが遅かったせいか、それともそういう魔法をかけてあったか、大きくならず、花壇の手前にちょうど良く咲いています。花弁の外側がピンクで中が白い、可愛い花です。前からいる、白いブラキカムとエリゲロンが、我こそが彼女の相手だと譲らないのですが、ニコチアナは彼らの区別が付かず、困り顔です。 そんなところでもめていないで、もっと強力なライバルが現れつつあるのに気が付かなくては、と私は思います。まだ、きりりと尖った葉を、姿勢良く伸ばしているだけですが、花が咲いたらニコチアナだってその長く赤いシベに熱くなるに決まっています。 庭の恋物語は冬に向かっていよいよ大詰めだ、とドキドキするのは、こんな朝。昼には、サフランの雌しべを摘んで今年こそサフラン酒を作ろうと、実用の庭を見るのです。 10月20日 淳子 |