暮らしのつぶやき

9 お櫃(おひつ)

お櫃とお茶碗 「はち?8合?!」思わず大きな声で、言ってしまってから、「そー、偉いねー」と、これはちょっと、取って付けたようだったか。

レッスンにきた彼女が、どうもソワソワと落ち着かないので、聞くと、お約束のお米を仕掛けるのを忘れてきた、と言う。じゃあ、今日はもう終わりにしましょうね、と言って、ところで何合洗うの?と聞いたら、8合!

ピアノの先生としても、主婦としても、まだほんの駆け出しの頃の想い出です。8合ものお米を食べる家族とは、どんなものかしら。10歳になるか、ならないかの、小さな手で、8合のお米を洗うのは大変だろう、と思ったものです。

あの頃私達は、おままごとのような二人の暮らし。小さな炊飯器、無駄な機能はいらないよね、と買った、タイマーも保温装置も無いもの。彼が、仕事から帰ってくる時間にうまく合わせて、炊き上がるようにして。

そのうち、家族も増えて忙しくなって、人並みに色々機能のついた炊飯器を買って、でも、まだ、どこかおままごと。「より美味しく食べるために、ひと手間かけましょう。」秋田杉の曲げワッパのお櫃を見つけたので。理由付けはいつも後から。

ますます家族はたくさん食べるようになり、もう、おままごとでは済まされない。嵐のような食卓。いつのまにか、お櫃はお蔵入り。

今使っている炊飯器は1升炊き。子供達が一番食欲のあった頃に買ったもの。気がついたら最近はいつも3合までしか炊いていない。それなのに1合は炊けない大きさ。大は小を兼ねない不便さに気が付くこの頃。

もっと小さな炊飯器に買い換えたら、またおままごとに戻そうか。大掃除でキッチンの天袋からお櫃を見つけて、懐かしく。いつ、蓋に、こんな輪染みができたのだっけ。でも中は、新品のように綺麗でした。

01/18/2002

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