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2000年11月前半日記
11月7日 火曜日
サザンカ意外に願いは早く叶った。朝靄の中にサザンカは枝いっぱい花をつけた。

花びらが、意地悪な棘のある冷気に傷まず、ふっくらと開いた。私は心底うっとりする。

ここに移したのも悪くはなかった。台所の水仕事をしながら、こんなふうに目を楽しませられるなんて。花びらが露で濡れた土に何枚かこぼれている。黒い土が花びらで慣れないお化粧を終えたら、昨日酪農家の奥さんに貰った堆肥をたっぷり漉き込んであげよう。裏庭の女王様とお約束。

堆肥は抱えきれない大きな袋に2つ。ついでがあったからと、軽トラで運んできてくれた。何十頭もの牛を飼う大農家の奥さんだ。はじめ、小さな庭が、ギュウギュウ詰の植物たちでいっぱいの小さな庭が、可笑しくて仕方ないようだった。

これであと5本のバラ苗を植えるのよ。私がそう言うと目を白黒させた。さてと・・・。ここにもあそこにもと、庭の手品師は不思議な植物をご覧にいれる。微笑みが驚嘆のため息に変わるのは時間の問題だった。帰る頃には、すっかり洗脳されて、初夏にまた来る事を約束。お土産に子牛をいただいたら、どうしよう。
11月3日 金曜日
プリムラ我ながら笑ってしまうが、ガーデニングウィークと赤ペンで書いてある、今週のダイアリー。なのに、バタバタしていたら、もう週末だ。胸のつかえが取れたら、時間も急に速く過ぎるようになった、いや、なったように感じる。

娑婆は三連休ですか、子鬼はブツブツ言いながら、やっと本日庭仕事。

1 花式部の剪定 「その木が邪魔!池を見せろ!」ブーイングに負けて、晩夏に剪定したが、その後また伸びた。花が枯れて種が付いて、枝と言う枝に、恐ろしいくらい、たくさんグレーの新芽が出ていた。思い切って三分の一にカット。相棒は拍手喝采。「もっとやれ、もっとやれ」と、うるさい。聞こえない振りをしていたが、「隣のその紫の花(メキシカンブッシュセージ)も切っちゃえ!」には、思わず剪定ばさみを抱えなおした。ちゃんとライフルに見えたようだ。野次馬は退散。

2 チャボヒバの剪定 金っ気を嫌うので、鋏を使わず、指先で摘み取りましょう、ってまさか。お屋敷の盆栽じゃあるまいし。切ったあとが少々茶色くなったって、新芽が伸びれば気にならない。気になるのは、春先の重い雪、枝が割れて形が崩れるんじゃないかと。暖かくなる頃には、ちゃんと丸くなっているのだが、それでも冬になると心配になる。この木の下は夏中、さるお宅で飼われている猫チャンの別宅になっていた。なかなか腐らない針葉樹の葉が、ベッドとして、ころ合いのクッションなのだろう。

3 芝の間の草取りと落ち葉掃き 長く降った雨のおかげで、土が柔らかく、クローバーは気持ちよく抜けた。しかしロゼット状の葉は頑丈。秋晴れの日、裏の空き地にタンポポが咲いていたのを思い出した、これも越冬しようと必死なのだ。仏心が出たわけではない、手が痛くなったので中止。落ち葉掃きも、途中で、ばかばかしくなって中止。冷たい風鈴のオブリガートに飾られた乾いた響き、風が動いている。仕事は、木がすっかり裸になってからだ。

今日はここまで。喜び勇んで、夢中になって、庭でひっくり返れるのは春夏の庭仕事。初冬はすぐに体が冷えてくる、ウルトラマンの庭仕事。点滅を気にしながら、夢見ながら。(写真は落ち葉掃きで見つけたプリムラ)
11月2日 木曜日
さざんか裏のサザンカが咲いた。毎年咲く時期が少しずつだが早くなっている。暖冬が進んでいるのか、サザンカが賢くなっているのか。(写真は台所の窓から見を乗り出して撮ったサザンカ)

植えて何年も花を見られなかった。初めて庭に木を植えた時、このサザンカや椿、金木犀という照葉樹をなぜ植えたのだろう。なぜ、白樺を植えなかったのだろう。一年中葉が艶々美しく、冬に花も咲く筈の我が家の木は、寒さで葉はいじけ蕾は開く前に凍る。虫がつくので嫌われる筈のご近所の木は、夏も冷涼な気候で幹の白さもけがれなく美しい。

気候の性格がのみこめた時には、時すでに遅し。こんな干からびた椿は大阪じゃ見た事ないぞ、と相棒に言われる。あの時、庭師さんが、ひとこと、「ここの寒さでは無理ですよ。」と言ってくれたらよかったのに・・・・と他人に矛先を向けるのはやめよう・・・。庭師さん曰く「寒肥はどうしました?」あっ、それもそうでした、ほったらかしじゃ花も咲きません。

どちらにしても気の毒だった。苛酷な環境に、放任主義のオーナーでは。白状すると、枯れ椿は、抜いて薪にしてしまった。3メートルもあるサザンカは抜いたが、処理に困って裏に植えた。トーテムポールにでもなればと。(ほんとか?!)

何が気に入ったか、この場所で再び根をおろして、葉艶も以前よりよくなった。冬になると蕾をつけるが、たいがい開く前に雪が降った。おととしあたりから、なんとか開花が初雪に勝つようになって、今年は霜が降りる前に咲いた。

しかし、恨み骨髄か、花はぷいとあちらを向いている。我が家のどこから見ても、満足に花の姿が見えない。高い梢に空に向かって咲いている。そろそろ御機嫌を直して、下のほうの枝にも花を咲かせて欲しいなぁ。肥料もやってるじゃないの。

町内の配り物を手に、ぶらぶら歩きながら、遠くの我が家を眺めた。サザンカが幾つもこちらを向いて咲いていた。

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