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2000年5月後半日記

5月31日 水曜日
キングサリ五月、そっと呟くと悲しくなる。いったい、どれほどこの光を風を香りを味わえたのだろう、もっともっと、一緒に居たいのに、もうおしまいとは。

そんな寂しい心をいたわるように、庭の花たちは毎日精一杯咲いて、それはいじらしいほど。「今年も忘れずやってきたのよ」ピンクのフウロソウ(アケボノフウロ)が言えば、隣の青いフウロソウ(ジョンソンブルー)が「去年は様子を見ていたのさ、今年は遠慮なしでいくよ」と、花茎を必死で伸ばすアケボノフウロを見下ろして。

なんだかあたし達似ていない?チャイブの横でアルメリア。答えてチャイブが、「全然。キミは食えないだろ?」・・・ちょっとちょっと、意地悪言わないの。刈り取りますよ。

そんなやり取りをおかしく聞いていた、キングサリ(写真)が知ったかぶりの顔で言うには。「マダムは最近バラにご執心。君たちの運命も風前の灯かも、チマチマした花など見向きもしなくなるかも。」

ざわざわと風が騒いで不安そうに花が揺れる。幾多の試練を乗り越え、涙を汗に変え、共に築いてきた庭ではないか、まさに草花一本一本が糟糠の妻である。何で疎かにしてよいものか。

はた目には枯れたとしか見えぬバラに、水をやる背中に漂う妖気。一鉢生き残った白バラに蕾を見つけて無邪気に喜ぶ、その無邪気さが、時には命取りに。
5月29日 月曜日
八重オダマキ不気味な事を相棒が話しかける。自然石のテラス部分は、少し石をはがして草など植えたらどう?新しいテラスのこちら側には蔓バラを這わせないとね、満開になるとモッコウバラって花が大きく見えて綺麗だねぇ。・・・・・・。まさか、庭に興味を持ったんじゃないでしょうねぇ。でもね、あなたの好きな真っ赤なサルビアもマリーゴールドも、おサルの顔みたいなパンジーも、この庭にはご遠慮願ってるのよ。それに・・・モッコウバラは8分咲きのときが一番綺麗だなって言おうと思ってたんだけど・・・。(写真は八重オダマキ、うしろにルピナス)
5月26日 金曜日
モッコウ薔薇と皐月毎朝忘れてはならない作業のひとつに、花がら摘みがある。萎れてクシャクシャになった花をそのままにしておくのは哀れだし、だいいち種になってしまえば、花はもう一仕事終えた気になって、とたんに花付きが悪くなる。せっせと花がら摘みに勤しむ姿を、内心花たちはあこぎな奴と思っているかも・・・・。

それがうっかり、蕾の付いた花茎をつまんでしまった。そのまま捨てるには忍びなくて、まだ朝露に濡れている花や、ハーブの葉っぱなどをかき集めて、小さなブーケを作ってみた。

我ながら珍しい事をする・・・作ったブーケをガラスの水差しに入れながら思う。どんなに庭に花があっても、さて家に飾ろうと鋏を握る気になれない。咲くとそこが約束の地、もう足す事も引く事もしてはいけないような気になる。去年見事に咲いたシャクヤクは、モミの木の枝と山吹の繁みに隠れて。ふさわしい花瓶を与えて賞賛の眼差しを注がせたい、そんな気もしないではなかったが。結局、私との密会を重ねただけ、そこで静かに花びらを散らした。

今回は断腸の思いで・・・と言うのはオーバーだが、なるべく草の陰になっているような、込み入りすぎているような所を選んで、それでも元気の良い咲ききっていないものを頂く。どの花もやさしい野の花の風情、手に取るとほんの微かだが甘い香り、そのあまりにも繊細な美しさに見とれた。(写真は今朝のモッコウ薔薇と皐月)
5月24日 水曜日
ピンクの穂はプリム・ラビアリー 青い花は宿根アマ日に日に成長する草花。だんだん土が隠れて、相棒の言う所の「ムサクルシイ庭」になっていく。もっとも、私はこれでもまだ足りない。むせかえるような緑で暗いほどの庭にしたい。

少しずつ蕾が開いていくと、それをお目当てに小さな虫たちも寄ってくる。虫の名前には疎いが、ミツバチや足長蜂くらいはわかる。時々ギョッとするような大きな太った蜂はクマンバチか。シロヤマブキを空に舞わせたような蝶々、黒く光るアゲハチョウ、yukikoOさんのHPで見たとおりのヒラタアブが飛んでいるのを発見。テントウムシもいた。いいぞいいぞ、その調子。でも、黒い羽にお腹がオレンジの虫が薔薇にくっ付いていた。嫌な予感がしたので、すぐ取ってつぶしたけど。

夜、お風呂上りに庭に出る。辛うじて寒くない程度。小さなガーデンライトひとつでは、宵っ張りの虫の様子はうかがい知れない。星も見えないどんよりした空の下、大地に満ちているのは低く荘厳な合唱。何千ものカエルの鳴き声が重なりこだますると、闇の中から生まれる新しい命を寿ぐ音楽になった。(23日夜)

昨夜の雲の逃げ残りか、霧がお向かいの屋根あたりで流れているのが見えた。手に取れるほどこれが下がると、本当の夏の朝だ。お日様は隠れていても、このしっとりした空気が気に入って宿根アマは咲き始めた。土には十分湿り気があるので、お隣のプリムラ・ビアリーも御機嫌麗しい。(24日朝・左写真)
5月22日 月曜日
ブルーベルと斑入りの葉はプルモナリア朝、たしかに飯綱山に見えていた雪が、午後戻った時にはすっかり消えていた。朝、11度だった気温が午後2時には27度。朝、庭に出たときに白くなった息は午後にはウンザリしたため息になった。

明日開くかもしれない蕾はモッコウ薔薇と八重オダマキ。どちらも、もう花の色を隠せない。

最後まで残っていた百合咲きチューリップが花びらを落とした。ホワイトガーデンの入り口に咲き始めた赤いツボサンゴ。ここから進入禁止の合図、と言う事にしよう。

枯れ始めたクロッカスの葉のあいだからは端正な紫のベル。次の楽章の始まりを知らせるように。(左写真・ブルーベル
5月19日 金曜日
池、モッコウバラの影が移ってタ・ニ・シ?妙なイントネーションに一瞬意味がわからず聞き返すと、ああ、なんだタニシか・・・・。じっと池を覗き込む、勘違いの我家のナルシスよ、あなたは大阪生まれだったわね。

さすが工学部言語学科卒(うそ)。普段きれいな標準語を話す人だけに、こちらの驚きと笑いが止まらない。子供の頃にしか使わなかった言葉が不意に出た、昔に刷り込まれたとおり、素直に発音したわけか。

10匹居たはずのメダカが7匹しかいない、今朝もトカゲが入水自殺している、イマイチ水が澄まない、などとブツブツ言ううちに小さな黒いタニシを見つけたらしい。なんとなく照れくさそうな表情の相棒を見て、そんな何十年も使われない言葉があったのかと、そちらに感心する私。

そうかもしれないなぁ。言葉も、決してまんべんなく使われているわけではない。知っているのに何年もこの空気を震わすことなく、深く胸のそこに落ちたままの言葉、或いは感情。

ある日、思いがけず、すくい上げられ陽の目を見た、忘れられていた言葉やその感情をいとおしみ味わう。人生にはそんな日もある。
5月17日 水曜日
今朝は宿根アマが咲きました。3年目の株で株張り30cm高さ40センチと立派に成長しました。サワサワと揺れる細い茎の先にうつむいた蕾が咲くと空に向かって嬉しそう。でも薄い薄い花びら、忘れな草に似た紫の色。たった一日で萎れてしまう短命な花びらですが次々咲いてくれます、雨が降ったら傘を差しかけて上げたい花です。(写真はまた今度)
光る葉
ゴールドコイン(右写真)も咲き始めました。黄色いボタン。あのラナンキュラスの原種、と言われ納得するその形。ホスタとラナンキュラス・ゴールドコイン

蕾蕾とたどっていくと、意外な事にクリスマスローズにも蕾が。やや遅れて咲き始めていた薄ピンクの株に、なんだか遠慮がちに頬を染める蕾。シロヤマブキ、シャクヤク、八重バイカウツギ、ツボサンゴ、デルフィニュームなどに囲まれて。私まだ咲いていていいのかしら?って。もちろん、どうぞどうぞ。

ちょっとちょっと忘れないで。葉っぱたちが、おかんむりです。見てますよ、聞こえますよ、素敵な緑のアルペジオが。(左写真オダマキ、オキナソウ、ホスタ・ワイドプリムなど)

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