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2000年6月後半日記

6月30日 金曜日
トカゲの卵昨日の午後やっと重い腰をあげて芝刈り。以前に比べれば芝の面積はずっと狭くなっているが、「僕は庭のことには手出ししませんよ。」当然のように相棒は言うし、昔なら世界最低賃金で嬉々として働いてくれたかわいい息子も、いつのまにか知恵をつけて、おいしくない仕事に見向きもしない。

芝のあいだから見苦しく伸びていた雑草も一緒に散髪して、エッジを切ると上等な絨毯のようになった。(やや贔屓目)。その緑の絨毯に被さるように茂っているのはセラスチューム。花は終わっているがシルバーの葉がこんもり美しい、しかし蒸れに弱くこのままでは危ないと思ったので、思いきってカット。案の定、中心部は茶色くドロりとなり始めていた。格好のトカゲの産卵所になっていたらしく、1センチほどの卵(左写真)が太陽にさらされる羽目に。写真を撮ったらすぐに暗がりに戻してあげて。セラスチュームは地ぎわから新芽がでているので、大丈夫、秋にはまた美しいトカゲの森になるだろう。


今朝の庭巡回では、3つ目のアシナガ蜂の巣を発見。大きさから見てここ数日に、こしらえた物だろう。芋虫を取ってくれるハンターと知って、すっかり蜂に寛大になった私。巣はそっとこのままに。
敷石のあいだからスターラベンダー
赤とピンクのアスチルベが咲いている。去年はこのアスチルベに負けて、大きくなれなかった二つのギボウシ、今年は大座布団を何枚も重ね置いている。シダ類や木賊(とくさ)も加わって超過密シェドーガーデン。ここもいずれ何とかしなくては・・・・・。

あら?バラ(メアリーローズ)が1時間ほどのあいだに随分開いた。宿根アマ、エリンジューム、メアリーローズと視線が流れる。青紫の金属光沢のあるエリンジュームが咲くのを心待ちにする一画。

金属光沢といえばエキノプスも去年より大株になった。いがぐり頭の蕾はまだ小さい。白のリアトリスも花穂を立ち上げ始めた。まだ他にも蕾はルピナスの二番花、薄いピンクのフクシア、八重のホリホック、色はアプリコットのはず。

心躍る巡礼の足元に小さなスターラベンダー(写真右)は朝日に輝く、6月最後の朝。
6月28日 水曜日
庭さてお茶を入れて一息つこうと思ったら降り出す雨。私が帰るのを待っていたかのよう。お茶を飲んだら、いがんだアーチを直そうと思っていたのに。諦めて空を見るうちに、激しくなる雨脚。はじめ水琴窟のようだった澄んだ雨だれの音が、ざわついた天の独り言になる。時々テラスに落ちる音はいいかげんにして欲しいという舌打ち。アーチ

でも雨が上がるといっそう庭は美しくなった。さっそく雀が探し物をするように飛び跳ねる。白い蝶々がゆっくり山椒のあいだを舞っている。羽が湿気っていないのかしら。どこに隠れていたのかな。そういえば今年は青虫を見ないけど、この蝶の生まれはどこかしら。

裸のアーチに水滴が並んでいる。庭のつきあたりに置いたアーチ(写真右)、誰もくぐれないけれど、道路からちょっと見上げると誘うようにバラのアーチが見えるのも、またいいかな。

ティーカップの絵柄は緑のバラ、まさにオールドローズのその形。2年後?3年後?あのアーチに絡んだ満開のバラを見ながら、誰かとここでお茶をする日がくればいいな。
6月25日 日曜日
朝、出かける前の1時間にいそいそと。アーチは昨夜梱包を開けて、組み立てが難しくないことは分かっていた。はやく形にしたくて、庭に置いてみたくて、帰ってくるまで待てない。確かに力も技もいらない、拍子抜けするほど簡単に出来上がった。問題は設置だ。更地に置くならともかく、すでに植物たちの根の張った場所に置こうと言うのだから。キングサリが当てどなく枝先を揺らしているあの場所に、置こうと決めている。20センチは地中に埋め込んでくださいと、説明書にはある。「土を掘ってからにしなさいよ。」テラスで、高みの見物を決め込んでいる誰かの声。池のときに懲りているから、やり直しせず一度で完成させたいしな・・・・、帰ってからゆっくりやろう。声の主を引き摺り下ろしてから。

それ、買い物だ、投票だ、玄関脇の伸びすぎた枝の剪定だ、帰るそうそう引っ張りまわされても従順にしているのは、ご機嫌を損ねたくない、ふかーいわけがある。まっすぐに、水平に、ぐらつかず、壊さず・・・、一人じゃ自信ないのよねぇ。これ以上シンプルにならない、きゃしゃなつくりに、やや不安も。

掘ってみると、やはり根がスゴイ。キングサリや姫こぶし、シロヤマブキも大きくなっている。ギボウシやシュウメイギク、スノーフレーク、地中は百根繚乱。「あたしの力じゃダメ〜、おねがーい」声は鼻にかけて。シャベルを渡して、枯らしたら承知しないよ、おっといけない、つい本音。

エキウムアーチは庭におさまった。こんな狭い庭には、オベリスク一つで十分、そんな言葉を言った昔もあったっけ。バラは植えません、固く心に誓った事もあったっけ。諸行無常なものよねぇ。仕方ない、走り出したのだから行くところまで行ってみるか。

それにしてもアーチに絡ませるバラをどうやってどこに植えるか・・・それが夏の宿題か。二日間の雨でたっぷり水を吸った土から気持ちよく雑草を抜いていたら、ニゲラの茂みの横に、消えたと諦めたエキウム(写真)の青い花を見つけた。こんなところに種が飛んだのか・・・・・。ラッキーラッキー。そう、願えば叶うで、バラのことも半分は自然に任せていきましょう。
6月24日 土曜日
リナリア雨で暗い朝の庭、ガーデンライトが今消えました。丸一日降り続く雨に煉瓦も小石も土も、落ち着いたいい色になって嬉しいわ、とは強がり。小降りになったかと思えば今度は霧が出て、こちらの頭もボンヤリかすみがかかったように、眠くなります。ソファーにゴロンとなったら、風邪ひくかな?腕が冷たくなっています。

植物たちを気遣うような優しい雨でも、こうも降り続くと花をつけた背の高い植物はお辞儀したまま起き上がれません。宿根アマは枝垂れ柳に擬態しているのか、「風情があるね、この花、気に入った」とはアマノジャクなギャラリー。グラミスとお茶

私は頭を悩ませます。青いデルフィニュームは茎が折れていないかしら、下りかけた遮断機が折り重なるラムズイヤーはもう一度整列するかしら、春に出たばかりの葉が黄色くなっているキングサリ、新芽が出ているのか確認したいのだけど・・・・。

でもこの雨の中、むしろ嬉しそうな植物も。柏葉アジサイの緑がかった白い花はみずみずしいし、強烈に甘さを放つピンクの皐月も雨にいっそう艶やか、ギボウシ達も大きな葉に雨粒を丸く転がしてゴキゲン、意外だったのはか弱そうなリナリア(写真左)、穂先は鈍ることなく空を指差します。

カラスが低空飛行してうちの屋根に止まりました。いやだ、気味が悪い。シッと追い払うと飛び立ちました。霧の中を飛ぶシルエットはお伽話の絵本から抜け出たようです。(写真右上は雨を避けて切ったグラミスと紅茶。飲んだら目がさめました。)
6月22日 木曜日
アルメリアたっぷりの花で重そうに枝をしなわせていたバイカウツギが、少しずつ空に向かって伸びている昨日今日。はらはらと花びらを散らす様は大粒の涙をこぼす花嫁のよう・・・うれし泣きとおもいたい。1ヵ月後に結婚式を控えた友人の顔を思い浮かべました。少々トウのたった花嫁とはいえ、初めての結婚に喜びより戸惑いを感じている様子が、むしろ初々しくかわいらしく私には思えます。

初々しいといえば我がホワイトガーデンも。

確かに厳選した白い花ばかり植えたので、一つ一つの花は美しいのですが花を引き立たせる緑がまだまだ不足です。足元にはバイカウツギの涙が散り敷かれて、不思議なホワイトガーデンになっています。

あばたもえくぼの蜜月もいいですが、結婚も何十年と厚みをもつと、良くも悪くも思い出という緑が覆い茂り、どうということのない小さな花のような毎日を輝かせます。

緑に隠れてひっそり仇花も咲いているかもしれません。そんなミステリアスなホワイトガーデンを夢見ます。(写真は白のアルメリア)
6月20日 火曜日
夜のマツムシソウお風呂上りに庭に出たとき月は見えませんでした。ただ曇った空にいくつかの星が見えただけ。

それが二階の窓、障子を開けると、月は覗き込むようにそこにいました。赤いとも黄色いとも言えるその色、いびつな形に滲んだ輪郭。泣きはらした恨みのこもった目に見つめられて、このまま眠るのは怖い夜。

そんな夜、もう一度庭に出るように誰が呼んだのでしょう。ガーデンライトの届かぬ庭の一画、重なる緑の葉でいっそう深い闇に、フウッと浮かび上がる白いリナリアと石楠花の新芽。細い蝋燭の火が灯るように。そしてそれを掲げもつのは誰。昼間、明るい空を仰いでいた薄桃色のマツムシソウ、今はこうべを垂れて、誰に挨拶するの。

風がないのに空気が動きます。首筋から肩口に重い冷たい空気が動くのを感じます。無邪気で平和で清潔な庭があの月に照らされて、不気味な影を宿す夜です。
(写真は夜のマツムシソウ)
6月16日 金曜日
ラベンダーとクリスマスローズおとといの雨が季節の区切りになったか、暴れる花を整理する、よいきっかけになったか。昼間まぶしい光の中で、色の褪せてきたゲラニュームを見て思った。明日には花茎を刈り取ろう。またあの美しい深い切れ込みの葉を楽しめばいいと。

ところが、そろそろ夕闇が迫ろうという時間、忙しい夕食準備の時間を盗んでそっと覗いた庭には、明るい日差しの中に見た色とはまったく違う花がいる。

薄闇に溶けることなく際立つ紫、ぼおっと光さえ放つような怪しい色。怨念を色に込めるのか。闇に輝くはずの白い花たちもどこか心配そうに木陰でそっと息を潜める。

切るのはやめましょう、誰に言うでもなくつぶやいてその晩は眠った。

翌朝、新しい光をまとって、薄紫は素直に優しいゲラニューム。花を揺らす風にバイカウツギの香りがしたような。

いつの間にかラベンダーの花穂が伸びていた。一緒に咲きたいのかもしれないな。「夏を慌てたらいけませんよ」うしろでクリスマスローズが言ったような。(写真はラベンダーとクリスマスローズ)

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