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2000年6月前半日記

6月15日 木曜日
グラミス・キャッスル昨日昼過ぎ家に戻ると、地面に穴を空けそうな勢いの雨。

真っ先に目に飛び込んだのは、45度に傾いたラムズイヤー。きれいに茂っていたゲラニュームも花の冠のように真中が抜けてしまっている。まだ小さいからいいやと、支柱を立てなかったデルフィニュームはバイカウツギにぐったりと寄りかかっている。電車の中でこんな風景に会った事がある。右肩にかかっている、疲れきって眠ってしまった若いお嬢さんの重みと温もり、ちょっと困惑気味の表情の紳士。

「雪の重みで雨どいが歪んでいたらしくて。樋からあふれた雨が滝のようにバラに落ちていたよ。」!。「ここから突付いて直したよぉ」よかった、この言葉、もう一息遅ければ平手打ちが飛ぶところでした。(ジョーダンジョーダン)

何もなかったように佇むバラ。愛くるしい我が恋人。そんなふうに、頬杖ついて、見つめないで。照れるじゃない。(写真は今朝6時のグラミス・キャッスル
6月14日 水曜日
グラミス・キャッスルミルク色の霧が晴れて細かい雨になった。その音はやさしく庭に誘う。

夜通し降り続いた雨でうな垂れる花たちの中にあって、ほころびかけた白いバラ。

饒舌に花咲くバラを賛美できない、少しにがい残像が蕾の後ろにある。本当に咲くのだろうか。
ここまできてもまだ信じられず。

愛しい人にくぎ付けになる目で見ている。言葉は消える。
6月12日 月曜日
バーバスカム 「あの白い花は何?」相棒からの、たっての質問だから懇切丁寧に答えた。

「ではご覧ください。ホワイトガーデンに開花中の花は、視線を高いところから段々と落として頂いて、八重バイカウツギ、デルフィニューム、バーバスカム(左写真)、アルメリア、ベゴニアです。葉ものは足元を斑入りカキドウシ、尖った葉にすっきりと鮮やかに白い斑が美しいアイリス・パリダこれはジャーマンアイリスの原種ですね。アクセントに葉が赤銅色のツボサンゴ。もう一度視線をモミの木の後ろに移して頂いて、これから咲くモナルダ、ガウラ、白花アケボノフウロ。それから一年草で・・・・。」

すると、途中でさえぎって「ホワイトガーデンと言うと聞いたところはいいけど、実際は、さえないんじゃない?一言で言うと、賑やかで陰気だね」要するにお葬式みたいだと言いたいのだ。

勢いづいて続けるには、「だいたいこの庭には白が多すぎる、この三分の一でいい。もっと赤や(サルビアのこと)黄色(マリーゴールドのこと)が欲しいなぁ。」

呆れて私は無言。

お葬式で結構。あたしはこの庭と心中しますから、とは、さすがに言えなかった。
6月9日 金曜日
ラムズイヤー・パープルセージ・ゲラニューム昨夜から降り続く雨。梅雨入りしたのか、どうでもいいのだが、雨で庭に出られないのがつまらない。

居間から雨をすかして見ると、宿根アマは消える直前の打ち上げ花火。池を覗き込むように倒れているが、軽く束ねておいたので、かろうじて水面すれすれ。

心配だったデルフィニューム・ベラドンナは赤い蝶ネクタイで気取って立っている。うどんこが出はじめたので、慌てて木酢液をまいたが、大丈夫だろうか、晴れたら様子を見に行こう。今年は華奢な花茎が10本以上も上がっている。アリウム丹頂とニゲラに囲まれて、いっせいに咲いたらどんなにか美しいことだろう。剪定で出た枝や、葉が汚れて切った黒竹に、ラッピング用の赤いビニタイで注意深く茎をとめながら昨夜思った。いつだったか、そんなに手荒く扱ったわけでもないのに、茎が折れて泣くに泣けない思いをしたことがあったっけ。

赤いビニタイは園芸用を買うまで雨は待ってくれそうもないので、応急のつもりだった。でも花が咲くまではこのままにしようか、結構かわいい。(写真はラムズイヤー・パープルセージ・ゲラニューム。ラムズイヤーに紫の花が咲けば完璧なカラーコーディネート)
6月7日 水曜日
ニゲラこんな六月なら大歓迎。朝夕が少し寒いほどで、日中はからりと晴れる。それで私は、日向に出るとミミズみたいに慌てて日陰に逃げ込む。

去年新しく作った花壇はテラスを囲むようにまた少し広げた。そこに、モモバキキョウやアガパンサス、リクニス、ナデシコなどを植え込んだ。友達からもらった一重のピンクのバラもたくさん蕾をつけて、ギリアやニゲラ(写真)、バーベナ、宿根ネメシアは咲き始め、煙るような一画を目指す試みは何とか上手くいきそうだ。
一番日の当たりが少ないところには、ギボウシやクリスマスローズを。今まで小さな鉢で窮屈そうだったのが、やっと伸び伸びできましたと、柔らかい黒い土に葉を広げて、あくびでもしてるように見えるのはこちらの気分の投影。

長袖に手袋、いくら太陽に背を向けても汗は止まらない。風がその汗をまたすぐ冷やすので、暑いのにくしゃみなんか出ちゃう。もう、そろそろやめようとテラスに腰を下ろすと、相棒がアイスクリーム片手にやってくる。よせばいいのに一匙口に入れてくれるので、もうおねだりが止まらない。「ちょっとー・・・、」今ごろ迷惑そうに言ってもだめです。地植えの植物に一度でも水をやると、後ずっとやらないといけなくなるのよ。だから甘やかしちゃいけないのよ。

今朝、その植え込んだあたりを見ていたら、すずめが二羽。一羽はまだ半分赤ん坊か、クシャクシャの羽に埋もれた頭がミミズクみたいに愛嬌がある。大きさは一人前なのに、上手にしまえない羽をブルブル震わせて、餌をねだっている。せっせと親鳥はパン屑をオレンジ色の残るくちばしに運んでいる。それでも子雀は一羽になると地面を突付き始めた、なんだ一人で食べられるんじゃないの。
6月5日 月曜日
これは長所か短所か。いつも、あそこをこうしよう、ここを直そう、この花は秋になったら掘り上げてあっちへ移そう・・・などと思いながら庭を見ている。気が付くと素手のまま雑草を抜いている、アブラムシをつぶしている。
やかんのお湯が沸くまで、ちょっと、そう思って庭に出た。一回りしたあと、ふと我に返って、「もう沸いたかしら?」相棒に聞けば、「もう何年も前に沸きました。ポットに入れておいたよ。」・・・・ああ、また浦島太郎しちゃった。
たとえば美味しくいれたミルクティとか、おとしたてのコーヒーとかいただきながら、ガーデンテーブルに摘んだハーブを飾って、のーんびり何も考えずに、ただこの庭の花の美しさにうっとりして、夢見ごこちで、うたた寝でもしてみたい。そうしたらほんとに素敵な浦島太郎なんだけどな。


ゲラニューム満開のゲラニューム。(左写真)去年より一段と株が大きくなって花付もいい。多年草は子苗で植えると3年は経たないと、その植物本来の大きさにもならないし味わいも出ない様だ。その3年が待てず、はじめから立派に仕立てあがったものを買えば、恐ろしく高いし、だいいち新しい環境に上手く馴染むかしら。
去年や、おととしの庭を思い出す。花の咲かないアルケミラモリスがあり伸びないホリホックがあり、ずいぶん脆弱な感じの草花ありと中途半端な庭だったことを今やっと気付く。それでも十分幸せだったのは、子育てと同じ、ただただ夢中だったからか。

庭作りって何なんだろうね、ポツリと相棒が呟いた。庭との蜜月の期間が過ぎ、ようやく落ち着き、成熟した庭になろうと言うこれから。これからが本当の庭作りかも。お互いを知り尽くしてもなお飽きない、そんな関係を築けるといいなぁ。
6月4日 日曜日
宿根アマと睡蓮相棒は庭に出ると真っ先池に向かいますが、私も最近は同じ。ただし彼はメダカを、私は池のほとりの宿根アマ(左写真)を見るため。大きな花束一抱えほどに成長したその花の色は、心を捉えて離さないミステリアスなブルー。満開だった他の花たちがそろそろ終わりを迎えようとしても、その美しさは変わることはありません。夕べには惜しげもなく花びらを散らして、翌朝は誰よりも早く目覚めて、昨日よりもっとたくさんの薄い花びらで株を埋め尽くしてくれます。

小さな虫が花の間を飛び回ると、くすぐったそうに震えるのも、ほんの弱いため息のような風に揺れるのも、私にはたまらなくいとおしく、夢中でメシベだけが残ったゴマ粒ほどの花柄をとると、直ぐにたなごころは一杯に。


そろそろ入梅のニュースが聞かれ始めたこの頃、冷たい風と強い日差しが交錯するこの庭も、ゆっくりしかし確実に夏の装いに変わりつつあります。一雨ごとに緑が茂り、満開のルピナスの後ろにはタチアオイやジギタリスが負けじと花穂を伸ばしてきました。雨で倒れかけたデルフィニュームに支柱を立てかけると、見下ろして柏葉アジサイが、足元には春に植えたバーバスカムがコボレダネのステッパが、芽が出るか分からないと言われて貰ったカサブランカが、その奥には白い花が咲くはずのモナルダやバイカウツギが、ホワイトガーデンを夢見る私の気持ちを知ってか知らずか、他よりワンテンポ遅れて成長しているようです。

枯れたと諦めていたベル咲きのクレマチスは、危うく新しいテラスの下敷きになるところでした。地ぎわから何本も新芽が出たのを工事の前日に見つけて手作りアーチのそばに植えたら、今日にはもうしっかりと絡み付いていました。旺盛に蔓を伸ばすクレマチスにはこのアーチでは小さすぎるかな、と噴水の上がり始めた光る水面を見つめています。
6月2日 金曜日
白のデルフィニューム「流れ星がいたよ!」思わず叫ぶと、それぞれのパソコンに向いていた顔がいっせいに振り向いた。驚いたような、呆れたような、羨ましいようなその表情。「・・・・いたよ」というのはまずかったな、チェックが来るぞ来るぞ・・・と身構えたが、このような奇しくも麗しい天のまばたきと遭遇できた事に免じて、本日は特別のお目こぼし。みんな黙っている。

天気予報に反して雨が落ちてきそうだった昼間の空の下、ロックガーデンの手直しと拡張を決行後、鹿沼土などを買いに下界に降りると、予報どおりの晴天。なるほど、雲が山を半分隠しています。家は雲の中だったのか。

その夜。暗くて見えないでしょ?と言われても、気になって外に出ると、木のサンダルの感触が冷たい。ぼんやり灯ったライトに、植えたばかりの山野草のシルエットが浮かぶ。タツナミソウ、ヤツフサアヤメなどイメージの浮かびやすい名前の草たちはかわいらしいが、屋根に届くほどの自分の影法師は、ただ不気味。それでも石の上を歩くと駒下駄のように響く音が牡丹燈篭の・・・、いやいや間違ってもそうは見えない、大入道って感じ。

光の反映しない北の空を見つめていると、だんだん目もなれて星が増えてきた。白い息が黒い空に天の川のようだ、そう思ったとき長い尾をひいて流れ星。願い事をする間もない一瞬、庭がくれた、きっとこれは贈り物。出会いは不思議、大切になさいよ、とメッセージを込めての。(写真は柏葉アジサイにエスコートされて咲き始めたデルフィニューム)

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