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2000年10月前半日記

10月15日 日曜日
膝から下、特にふくらはぎのあたりがじわじわと痺れて、そこから疲れの粒が全身にめぐっていくようだ。本当言うと、もう夕飯の支度も面倒なくらい。でもこの疲労感は、好きな庭仕事を久しぶりにできた満足感が縦糸になって織り込まれているのでとても心地よい。

「今度の日曜、町内の掃除ですから」と念を押されなければ、うっかり忘れていたかも。朝7時からの遊園地掃除に始まった一日は、極自然にそのあと庭、ドライブ、買い物と続く。なにしろこの朝の奉仕で、今日一日の労働ノルマは果たした気分。おまけに日曜だもの、休息が必要だ。とまぁ、こんなふうに言い訳を並べ立てるのも、今月中庭仕事はいたしません、なんて啖呵をきった記憶も生々しいので。

たとえ真実としても、自分に都合の悪い事はなかなか認めたがらない脳細胞は、快楽に結びつく欺瞞にはなんと素直な事か。

袋のまま庭の隅に積まれていた堆肥(乗馬倶楽部特製)を、ちょっとだけよ、の気持ちで漉き込みました。我を忘れてスコップに力がこもり過ぎないうちに、中断するこの切なさ。
直売所で買った唐辛子
お昼には地粉の新そば。紅葉を期待して行った「鬼女もみじ伝説の山」は色付くには早く、白樺の葉の風に落ちる音が、さわさわと気ない拍手に聞こえて、ぞっとした。遊ぶのは今日だけ、今日だけ・・・。

たまたまイベントの日で野菜の直売所は賑やか。つられてネギだほうれん草だ大根だ赤いピーマンだ唐辛子(写真)だと買いこみました。それだけじゃない、「そこの炭焼き小屋で作った木酢よ」指差して微笑む売り子のおばさんが女神に見えちゃって。

早く帰ろうと言う相棒(悲しきアッシー)を無理やり山の喫茶店に連れ込んでコーヒーを飲みました。BGMにかかっているバッハはチェンバロ、あーピアノじゃなくて良かった。

夕飯の材料を買ってやっと帰宅だぁ、と言うのを「次の角、左折」の命令口調に、つい反応したあなたが不憫。宿根カスミソウ、スウィートアリッサム、白花ホトトギス、紅花大文字草、チューリップとムスカリとスカシ百合とアリウム・カエルレウムの球根、小さなオベリスク、たったこれだけの買いものに、お財布のお金が足りなくて隣にいた相棒からまた寸借(詐欺)、ますます不憫。

それで今日はやっぱり、心地よく、懺悔。
10月12日 木曜日
ルコウソウとバラ毎朝、庭に出る。季節のページがめくられる風を、肌に心に目にその一瞬を感じられた日は幸せ。もちろん今朝もガラス戸を開けると、真っ先に飛び込んだのは強い金木犀の香りだったが、それはむしろ強すぎて次の瞬間には麻痺されてしまった。

金木犀のそばに立って、見えない霧の重さを肌に感じながら、ふと気付いた香り、深い森に入ったときのような。風が、ここよここよと教える。グレーとシルバーと黄緑を混ぜた色のコニファーは今年の夏にぐんと太って、しかも綺麗な円錐形になった。匂いの主はこれか。風が庭を回って、べったり張り付いたあの花の匂いを掃きとっていくのだ。そして、爽やかだが軽くはない、微かだが印象的な、冬の前触れの匂いを私に感じさせる。

お向かいのハナミズキが突然そこだけざわつくと、何羽もの鳥が飛び立った。雀より二周りは大きい黒っぽい鳥は、冬の渡り鳥のツグミではなかったか。確認する間もなくどこかへ行ってしまったが、そのうち赤いウメモドキの実を突付きに戻ってくるに違いない。(写真はルコウソウとメアリーローズ)
10月11日 水曜日
まだ咲かないトリカブト昨日は暖かいというより、暑いといった一日。庭の生き物がいっせいに復活して、散り始めた花の周りで喜び狂っていた。居間のガラス戸に蜂が何匹も何回も体当たりしてくる。それも恐ろしいし、金木犀の香りで向こうが見えないほど(と感じている)、それで暑くても窓が開けられないとは、かわいそうな相棒。

香りと花粉の量の因果関係について考察し始めた相棒の横で、「これはまずいな」と思う。テラスは居間の前、テラスにパーゴラ、パーゴラにバラ。バラは一期咲き白のモッコウバラ、黄色と違って香りがあると言う。びっしり覆うのは3年先として、彼の花粉アレルギーがそれまでに改善されるとは思えないし。デルフィニューム

短期と長期に渡って綿密な計画を練っているのか、なんて冗談とはいえ、ひどいであります、いくらトリカブト(写真左)を植えたからって。その横にはドクダミも植えてあるの、お忘れなく。別に、薬草園を気取っているわけじゃないけど。

今朝はデルフィニューム・ベラドンナ(写真右)が咲きました。ウドンコ病はデルフィの宿命か、茎も葉も粉っぽい。「バラの近くには植えられないわ・・・」おっと、相棒には聞かせられない。きっと、ボクの事はバラほど気にかけていないんだ、と拗ねるに決まってる。

トリカブトは濃紺の花のはず、デルフィとどっちが濃い色かな?
10月8日 日曜日
バラの葉どうだろうか、やはりあまり趣味のよい画像ではないと眉をひそめられるか。そう思いつつも、むしった葉をそのまま捨てる気になれずテラスに並べてカメラに収めた。

1年前、はじめて買った3本のバラのうち2本はあっけなく枯れた。何とか生き残ったグラミスキャッスルは初夏に心をとろけさせる花をいくつか咲かせて、そのあとはまるで力尽きたように、衰えていった。

水やりだけ、何も足さず何も引かず、そんな気持ちでただ眺めるだけだった。思い入れが強すぎるのか、下手にさわると、全て悪いジンクスを踏むようで、むしろ冷たく突き放した。

ふらりと寄った店で衝動買いしたメアリーローズが、これはすぐに地植えにできたせいかもしれないが、何しろ元気がよい。虫知らず病気知らずで、血色のよい赤ちゃんのほっぺのような桃色の花を咲かせるのを、鉢植えのグラミスはどんな気持ちで見ていただろう。

グラミスを置くテラス前、花壇に植えた一重のバラは、去年の秋に挿し木をもらって植えたもの。モッコウバラにも匹敵する成長の速さで枝をぐんぐん伸ばすが、やたら虫が付く。アブラムシに青虫、ゾウムシ。それでもバラも負けていない、あとからあとから蕾をつける。枝は上に伸びず横へ広がるので、狭い花壇には邪魔になってきた。こんな仕立て方がふさわしいかどうか、わからないが、低いオベリスクにぐるぐる巻きにした。トゲは他の草花に引っかかるし、ルコウソウのツルはバラに絡んでいるし、分厚い手袋で作業はもたつくし、かといって素手では血染めの花壇になりそうだし。大騒ぎの一部始終をグラミスはどんな気持ちで聞いていただろう。

「シミの付いた葉は黒点病、取ってあげてね。」優しいサイト越しの声に踏ん切りがついて、こわごわ葉に触った。からりと乾いた音、硬い感触。私はキツネになって葉っぱはコインになった。両の手の指では足りないその数、何枚と言わずたくさんと言いましょう。これは前金としていただいて、ですから、あとの面倒は私が引き受けました。
10月7日 土曜日
近寄って三尺バーベナ夏に、たくさんコボレダネで出たからと、いただいた苗2本。ヒューッと伸びてその先に紫色の小さな花がクシュクシュって咲くの、まるで謎解きのような説明に首をかしげた。もしや三尺バーベナでは?と思ったがあの花は小さくはないだろう、硬い茎の頂点に濃い絵の具を落としたように遠目ではっきり見える。

ところがそれは三尺バーベナ(写真)だった。欲しかった花なので、しかもコボレダネで増えると言うなら、なおさら嬉しいが、あの形容が当たっていた事を近寄ってはじめて知った。

小紋の裾に散らしたいような薄紫にいっそう愛着が湧いた。はじめからこの姿を知っていたらもっと早く庭に咲かせていただろう。

アジサイやアリウムも小さな花が集まってひとつに見える花、こんな風に一見華やかだが近寄ると可憐と言うのがとても好き。そんな私の趣味を知っている友達は、わたし実は一番好きな花がシャクヤク(最近はオールドローズも)だと知ると驚く。そうかな、大きくて立派だけれど手の中でハラハラこぼれる花びらがやっぱり可憐でしょ。
10月5日 木曜日
シュウメイギクと赤い実今朝はすっきりと晴れた庭。といっても周りの山は雲の中だし太陽も出ていない。なのにそう感じるのは、空気が透明で小さな庭だけはよく磨き上げられたグラスのような冷ややかさが満ちているから。

相棒がまだ起きて来ないのをいい事に彼のベストを羽織って庭に出た。

満開の金木犀にも虫の姿はない、寒いのでそれぞれ安息の場所を見つけてじっとしているのだろう。春からずっと直径5センチのまま、いつも数匹の蜂が警備に当たっていた蜂の巣はもぬけの殻になっていた。昨日の朝ここに頭を突っ込んでいた蜂はどこへ行ったのかしら。

探すわけでもないが、見回していたら、昨日とは違う庭の様子に思わず「やっぱり!」と声を立ててしまった。姫コブシに朱色の実が付いている。(写真シュウメイギクの後ろに)さやが破れて顔を出し始めたのだ。太った枝豆のようなものを夏に見つけた相棒は、気持ちの悪い物があるから見てごらんと私に教えた。植えて2年目の姫コブシは優しいピンクの花を今年やっと咲かせたのに、冴えない色だらしない形と相棒は酷評した。それに足りず本気で気持ち悪がるとは・・・、相棒に心の中でアッカンベー、私も見てギョッとしたがポーカーフェイスで「ばーか、ただの実じゃないか」と思い切り冷たく教えた夏。よかった、やっぱり実だった。

姫コブシは赤い実を付ける一方フワフワの毛皮付きの冬芽も忘れていない。上等。こんな薄っぺらのベストよりよほど暖かそう。

あーまたボクの着てるぅ。起きてきた相棒に、ハイ万歳して、と脱がされちゃって、チェッけち。
10月4日 水曜日
名前は?灰色の霧がこちらに向かってくる。朝の太陽も針葉樹の林の尖った先も、もうすでにヴェールに隠れている。心の中にも霧が流れ込んだので、希望が隠れて憂鬱なのだ。悲しみをいっぱいためた空が泣きたいのを我慢している。屋根に流れた朝露のあとが涙の筋に見える朝。

夏の太陽は陽気に昇って夕暮れに疲れ果てて沈んでいった。秋の太陽は昼間居眠りをしているので、夕焼けに慌てて燃える。真横からオレンジ色の鋭い光に照らされた庭は、陰と日なたが半分ずつの夕方。私は日なたに身をおいて、日陰に咲いた黄色い花を見た。

スーパーの店先に時々現れる露天の園芸店。なんでも安いのはありがたいが、名前がはっきりしないのはちょっと困る。100円で買ったこの花も、アヤメの仲間でしょう、と言うだけであとはわからない。背丈は20センチほど花も1センチあるかないか、要注意の黄色もこの程度なら許せるし、地味なロックガーデンにポッと明かりが灯ったようでいい。(写真)

その小さな明かりに誘われて足元に目が行った。虫食いだらけ破れ放題の葉は玉咲きプリムラだが、もう新しい芽を抱いていた。このまま雪の下で冬を越して春一番に茎を伸ばして、この芽は花芽、きれいに丸いくすだまの花になる。

秋に憂鬱になっているのは私だけか、庭は春の夢を見て冬中眠るために、秋にはのんびり感傷に浸っている暇はないようだ。
10月2日 月曜日
丸いトピアリー仕立ての金木犀にびっしりついた蕾、そのいくつかが開いて庭に懐かしい香りが漂いはじめた。

カレンダーをめくり忘れても、忘れず10月になると、咲き始める金木犀。この木が庭にいる限り私は10月を忘れないだろう。少々乱暴に畳まれた記憶のページはいっせいに開かれる。順不同で現れる思い出の映像に酔っていると、「ああ、またトイレの芳香剤かぁ。」とぶち壊しの声が聞こえてくる。敵も毎年同じフレーズだが。

今朝は曇っているが少し暖かい。まだ7時だと言うのにルコウソウが咲いている。ここ数日寒い日には、昼間太陽が柔らかい陽射しを落としてもルコウソウは開かなかった。細長く白い蕾が萎れてうな垂れて茶色になるので、これはやはり真夏の花なのだと思った。でも今朝は、明らかに一回り小さくなった花だが空を仰いで咲いている。のんびりはしていられないのだろう。タツナミソウ

金木犀のほかに10月らしい花はシュウメイギクと台湾ホトトギス。我が家の定番の花。それに今年もうひとつ加わった、タツナミソウ。(写真)春に手に入れた山野草だが、花が咲くまでは雑草みたいでぱっとしないなぁと、内心庭の真中に植えたのを後悔していた。でも藤色がかったピンクが上品なよい花ではないか。浮世絵に見るような、波の形の花。立浪草、かな?

ポツポツ開き始めたメアリーローズも秋の花は小ぶり、小さな山野草や日本的な花たちとも調和している。

金木犀、ルコウソウ、バラ、咲ききるまで、冷たい雨は降って欲しくないと思った。
10月1日 日曜日
6月のポリジ「ポリジ!今ごろ?」このお店に来る楽しみはセンスのいい商品だけではない、いつもさりげなく飾られたバラやハーブ、ちょっとその辺では見かけない花は、もう何年も前から種をイギリスから買って育てた物なのだそうだ。

これはポリジ、私だって知っている、でも今ごろ咲くの?うちのは梅雨時に大きくなって、なりすぎて、花がたくさんついていたけど邪魔になって抜いちゃった。それからすっかりポリジのことは忘れていた。(写真は在りし日のポリジ、6月に咲いた)

「ね、大きくなるのよ、でも咲いているうちから、どんどん種がこぼれて芽を出すでしょ?それを育てて・・・・」一生懸命説明してくれるのを聞きながら、頭の中は後悔がとぐろを巻いている。あの時、もうちょっと待っていたら・・・・・。

おまけに隣の花瓶にはミントだ。今度はヨダレ。いまさら、「来年咲かせたい花はミントです」なんて、ウブなガーデナーみたいだが、実はそうなの。キャットミント、カラミント、ミントと付いたこれらは持っている・・・、でもあの尻尾みたいな花のミントじゃない。地植えしたら大変な事になる、庭中ミントだらけ。だからキャットミントもカラミントも日当たりの悪い通路にあえて植えた。ろくに花も咲かない。

欲しいな欲しいな、頭の中に、はびこるミント。我慢できずにホームセンターの園芸コーナーで季節はずれ、買ったポット植えのペパーミント。案の定、店員さんはミントの恐るべき勢いについて、念入りにご説明下さった。ありがたく拝聴して、それではコンテナ植えにします、そう言うと店員さんも安心した様子だった。

約束どおり、鉢植えにしてハーブコーナーに置いた。同じく鉢植えのヒソップとレモンバームはいまいち元気がない。でもこれはいいかも、生ごみ堆肥たっぷりの土だし。どうか来年には尻尾の花を咲かせておくれ。

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